職人魂

伝えたいもの

木を「見る」・「生かす」力

冒頭でもお伝えしたように、栄建築は職人の会社です。家を建てるのは、ただ食わんがためではなく、及ばずながら職人としての役割を社会で果たしたいため、という自負があります。そのことについて、少しだけお話しさせていただければと思います。

大工にまず必要なのは、木を見極める力です。昔の棟梁たちは山を見て木を買ったと言われるように、木の素性(育ってきた環境・環境に培われた性質)を見抜き、適材適所の使い方が出来ることが、木造建築の寿命を百年、二百年と保たせる必須条件でした。

時代は大きく変わり、コンピュータ制御でプレカットされた建材を組み立てる家づくりが主流になりましたが、そのことによって木を見る目を失ってはならないと、私たちは考えています。今も栄建築では、親方自ら各地の木材市場に出かけ、吟味した木を仕入れていますが、必ず若い大工を同行させ、勉強する機会をつくっています。先人たちが長い年月をかけて育んだ“木とのつきあい方”を、私たちの代で途切れさせてはならないと考えているからです。


技術の継承

日本の木造建築の美しさは、世界の有名建築と比べても勝るとも劣りません。そしてその名声を支えてきたのは、大工と呼ばれる匠たちです。木を組むための継手・仕口ひとつとってみても実に様々な種類があり、強度のみならず意匠の美しさまで計算に入れた職人の腕の確かさ、美意識の高さには目を見張るものがあります。

もちろん、こうした技術は一朝一夕に身につくものではありません。場を与えられ、先輩に恵まれ、さらに本人に高い志がなくては不可能なのです。栄建築はそうした職人の研鑽の場にふさわしい存在であろうと、日々努めています。また、大工を志す若者を受け入れ、日本の職人文化・ものづくり文化の継承と発展をめざす『大工育成塾』のプロジェクトにも共鳴し、受け入れ工務店の一員として門戸を開いています。


親方を育てる

栄建築の社長・井上一幸は、修業時代に師匠から言われた言葉を肝に銘じています。その言葉とは、「金を残すよりも、名を残すよりも、人を残せ」という言葉です。この場合の「人」というのは、「職人」ではなく「親方」という意味。つまり、自分一人が腕の良い職人として終わるのではなく、良い職人を育てる親方になれ、と師匠は井上に教えたのです。

なぜ「職人」ではなく「親方」なのか、その答えは明らかです。親方は次の世代に≪つなぐ≫役割をもった存在だからです。ものづくりの心と技は、ずば抜けた腕をもつ一匹狼の職人ではなく、多くの弟子たちのお尻を叩いて一人前に育て上げる親方によって伝えられ、守り継がれてきました。だからうちの職人たちも、ゆくゆくは親方になってもらう、井上はそう思っています。


生まれかわっても大工になりたい

栄建築にお越しいただいたお客様は目にされたことがおありかもしれませんが、こんな言葉が事務所の入り口に掲げられています。「生まれ変わっても、もう一度大工になりたい。家づくりが大好きだから」。

大工は技術以外に売るものがありません。物言いはぶっきらぼうだし、相手によって話の内容を変える器用さも持ち合わせていません。それでも、「生まれ変わっても大工になりたい」と思うくらい、この仕事にすべてをかけていることだけは間違いありません。その気持ちとお客様への誓いをこめて、この言葉を掲げました。

一生に一度かもしれない家づくり、それが満足の行くものでありますように。そして住まう人がきっと幸せになりますように。そんな祈りをこめて、私たちは持てる技術のすべてを注ぎ込むことを、お約束いたします。

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